蕎麦について
老舗の名店で食べる蕎麦は当然おいしい。
どの街にもある普通の蕎麦屋は当たり外れがあるもののやはり美味しい。
立ち食いそばも個性があって美味しい。
蕎麦というジャンルは色々な形態があってどれも好きだ。
立ち食いそば屋で感じた事を書いてみる。
立ち食いの場合は「蕎麦」ではなく「そば」と書いた方がしっくりする。
立ち食いといっても最近流行りの高級志向から駅のホームにあるような昔ながらの店もある。
最近の富士そばや箱根そばはテーブルとイスを完備して、女性でも気軽に入れる様に工夫されている。
富士そばのカツ丼セットとか街の駄蕎麦屋より美味しかったりする。
しかし、立ち食いそばのあるべき姿は違うんじゃないだろうか?
テーブルなんかいらない。
ついでに言えばおしゃれ感や清潔感もいらない。
疲れきったおっさんの店員が湯きりのテボを力なく振って出すような店。
しょっぱいつゆに箸で持てば切れてしまうようなのびた茹で麺を使う。
店に活気なんていらない。
殺伐とした空気の中でこその味わい。
そんな店での作法がある。
丼はカウンターに置くな!手で持て。
蕎麦は長く噛むな。1~2回噛んだらそのままのどに流し込め。
寅さん映画で好きな台詞
お行儀よく食べる子供に寅さんが
「そんなにいつまでも噛んでたら口の中でウンコになっちまうぞ」
まさに名言!
そばをグチグチ噛んでいる奴の耳許で言ってやりたい言葉だ。
立ち食いそば喉で味わえ。
更に進んで胃袋で味わえ!
ちなみに私は「胃に歯がある」と言われるほど噛まないで食う。
かけなら1分で汁まで飲み干せ。
立ち食いそばがぬるいのは早く食べられ様に工夫された温度なのだ。
藪系の蕎麦屋で汁がしょっぱいのと同じく立ち食いはあえてぬるいそばを作っているのだ。
ちょいと贅沢に天玉蕎麦なんてのを頼んだらかき揚げを麺の下に潜り込ませてグズグズにして食う。
どうせグズグズにするのだから揚げたてのかき揚げなんて必要なし。
玉子は最後まで崩さず大事にとっておいて最後に汁と一緒にすすり込む。
種物のそばはちょっと時間がかかるが3分で汁まで飲み干せ。
そんな駅のホームの立ち食いそば屋で達人のような客をたまに見かける。
入店から退出までほんの3分以内。
まるで日本舞踊の家元が舞うような無駄のない流れるような所作。
混んでいるカウンターのわずかな隙間に舞うように優雅に半身を入れ、食券を出しながら静かに「そばで」とくたびれた声でコールを入れる。
手で高く掲げた丼から素早くそばを流れるように喉に流し込む。見る者にはそばが液体にすら見える。
そこには食事を楽しむという気負いの欠片もない。
まさに立ち食いそばの達人である。
そんな達人たちの外見には似たような特徴がある。
くたびれたスーツにヨレヨレのショルダーバックが目印だ。
道を極める者達は不思議と似たような雰囲気を醸し出す。
さぁみんな 達人目指してそば食いの修行に行こう!